猿のボディランゲージと人間の非言語表現

こんにちは、マイムアーティスト・講師の織辺真智子です。

今日のテーマは「猿のボディランゲージと人間の非言語表現」です。私たちは普段、言葉を使ってコミュニケーションをとっていますが、実は言葉以上に多くの情報を伝えているのが、ボディランゲージなどの非言語表現です。今回は、私たちと近い存在である猿たちのボディランゲージから、人間の非言語表現の起源や共通点を探っていきます。

私たちのルーツを探る

人間が言葉を話す以前、私たちの祖先は、おそらく猿と同じように、身体の動きや表情、声のトーンといった非言語的な手段でコミュニケーションをとっていたと考えられています。猿のボディランゲージを研究することは、私たち人間の非言語表現のルーツを理解する上で非常に重要です。

猿、特にチンパンジーやボノボといった大型類人猿は、私たち人間と遺伝的に非常に近く、彼らの社会行動やコミュニケーション様式は、人間のそれと多くの共通点を持っています。彼らは、個体間の優劣関係、友好関係、敵対関係などを、複雑なボディランゲージで表現します。

チンパンジーのグリーティング行動

例えば、チンパンジーの「グリーティング行動」はその一例です。チンパンジー同士が会った際に、互いの口元や顔を近づけたり、毛づくろいをしたり、手を差し伸べたりする行動は、友好関係を築き、社会的な絆を強化する上で不可欠なものです。これは、人間が会釈をしたり、握手をしたりするのと似ていますよね。

感情の豊かな表現

感情表現も非常に豊かです。興奮した際には、毛を逆立てて体を大きく見せたり、大声を出したりします。これは、相手に対する警告や威嚇のサインとなることがあります。逆に、恐怖を感じた際には、体を小さく丸めたり、目を伏せたりします。また、恐怖や服従を示す際には、背中を向けたり、お尻を見せたりすることもあります。

これは、私がパントマイムで、例えば「恐怖」を表現する際に、体を縮こませたり、目を大きく見開いたりするのと、共通の「身体コード」に基づいているように感じられます。

表情による感情伝達

さらに、猿の表情も非常に多様です。歯を見せて微笑むような表情は、人間では友好的なサインですが、猿にとっては「服従」や「緊張」を示す場合があります。逆に、人間が怒りを表す際に歯を食いしばるように、猿も威嚇の際に大きく口を開けて牙を見せることがあります。文化的な違いはありますが、表情筋の動きによって感情を伝えるという基本的なメカニズムは共通していると言えるでしょう。

ゴリラのドラミング

ゴリラの例も面白いです。ゴリラのオスが胸を叩く「ドラミング」は、自分の強さや優位性を示す行動です。これは、縄張りの主張やメスへのアピール、あるいは他のオスへの威嚇など、様々なメッセージを伝えることができます。

このドラミングは、まるで人間が舞台上で、体を使って力強さや感情を表現するダンスや、太鼓を叩くようなリズムパフォーマンスにも通じるものがあります。リズムと身体の動きが一体となって、言葉を超えたメッセージを伝えているのです。

パントマイムとの共通点

このように、猿のボディランゲージは、私たちの非言語表現の多くが、進化の過程で共有されてきた普遍的な身体コードに基づいていることを示しています。パントマイムという言葉を使わない表現芸術を追求する上で、猿たちのこうした行動から、身体の動きが持つ根源的な意味や、感情を伝えるための普遍的な身体表現のあり方を学ぶことができます。

彼らのコミュニケーションは、まさに「身体で語る」ことの重要性を私たちに教えてくれているのです。

まとめ

猿のボディランゲージは、人間と共通する非言語表現のルーツを示しています。彼らは、グリーティング行動、恐怖、興奮、服従といった感情や社会関係を、身体の動き、表情、声のトーンで豊かに表現します。ゴリラのドラミングのように、力強さや優位性を全身で伝える行動も存在します。

これらの行動は、パントマイムにおける身体表現の普遍性や、言葉に頼らずに感情やメッセージを伝えることの可能性を私たちに示唆してくれます。

猿たちのコミュニケーションから、私たちの非言語表現の奥深さを感じていただけたなら嬉しいです。


織辺真智子
マイムアーティスト・講師